前立腺がん患者が、全国からなんとか命を救ってほしいとして訪れる滋賀医大病院において、病院は多くの患者の門前払いした。患者の願いを叶えることができる医師がそこにいるのに、その医師を排除しようとする病院長がそこにいる。いったい病院はなんのために患者を置き去りにするのか、番組を見てお考えいただけただろうか?
以下の番組がMBSで2019年6月30日深夜に放送されました
MBSドキュメンタリー 映像’19 6月30日(日)の放送内容(毎月最後の日曜日 深夜0:50~1:50放送)
閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか~
治療を切望する患者がいて、治療ができる専門医もいるのに病院が認めない、そんな前代未聞の事態となっている大学病院がある。滋賀医科大学・小線源治療学寄付講座の岡本圭生教授は、前立腺がんのある治療法のエキスパートだ。「小線源治療」と呼ばれる方法で、前立腺に微弱な放射線を出す小さなシードを何十本も埋め込み、細胞を死滅させ、がんの再発を防ぐ。岡本医師は高リスクと呼ばれる重症の患者にも積極的に治療を行い、全国から患者が集まることで知られていた。ところが、6月末をもって治療を打ち切ると病院が通告した。
一体なぜなのか…。
調べてみると泌尿器科講座と岡本医師が教授を務める寄付講座の間に埋めようのない溝ができていた。泌尿器科の未経験の医師が患者に告げず小線源治療を実施しようとしていたのを岡本医師が寸前に止めたことが発端だという。事実を知った患者らは、説明義務違反だとして、この医師らを提訴。岡本医師も一方的な治療打ち切りだとして、病院に治療継続を求め仮処分の申し立てを行っている。
一連の騒動を「医療界ではよくあるゴタゴタ」と指摘する声もある。しかし、当事者が実名でここまで声高に問題を訴える事例は、これまで聞いたことがない。大学病院で何が起きたのか考察する。
毎日新聞2019年6月29日 05時00分の報道内容
前立腺がん放射線治療 認めぬ病院、求める患者…MBSで30日深夜ドキュメンタリー
小線源治療を行う滋賀医科大学の岡本圭生特任教授=MBS提供
前立腺がんの放射線治療打ち切りを巡り、滋賀医科大学付属病院の医師や治療を望む患者らと、病院側との間で持ち上がった対立に、関係者の証言から迫るドキュメンタリー「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」が30日深夜(7月1日午前)0時50分、MBS(大阪市)で放送される。
治療継続を求める患者ら=MBS提供滋賀医科大の岡本圭生特任教授は、前立腺がんの放射線治療「小線源治療」を実施している。この治療は微弱な放射線源を前立腺に埋め込み、がん細胞や周囲の細胞を永久的に死滅させる方法で、岡本教授は独自の方法を編み出したことで知られている。
2015年1月、滋賀医科大に特任教授として就任した岡本教授は、再発の可能性が高い「高リスク」と呼ばれる前立腺がん患者の治療にも積極的に取り組み、高い治療成績をあげてきた。しかし、滋賀医大は昨年12月、岡本教授の講座を19年末で閉鎖すると公表。岡本教授による手術も19年6月末までとした。治療を願う患者がいて、治療ができる専門医もいるのに、病院が認めない事態が発生した。
患者ら約800人は患者会を発足させ、国や行政に治療の存続を要望。さらに、患者7人と岡本教授は、実質的に治療期間の年内延長を求めて大津地方裁判所に仮処分の申し立てを行い、大津地裁は5月、申し立てをほぼ認める決定を下した。患者を置き去りにした状態はなぜ続いたのか。患者らの訴えを交えて検証する。
取材を担当した橋本佐与子ディレクターは「医療過誤のように患者が医師や病院と対立するのではなく、患者と岡本さんという一人の医師が病院と対立するという状態に陥った大学病院が舞台。患者の岡本医師への信頼の厚さの背景には何があるのか。視点を病院側、患者側に置き換えながら取材を続けたが、患者側の視点で考えると不可解な出来事が浮かび上がってきた」と話している。【倉田陶子】