泌尿器科科長の指示で患者を選別
前立腺癌であると判明し、滋賀医大、泌尿器科を受診した患者のうち23人に対して、同病院泌尿器科は小線源治療を行うことを勧めましたが、その担当医、成田医師には小線源治療の経験が全くなく、またその訓練を受けたこともありませんでした。
一方、まったく同じ時期に、同じ泌尿器科の受付に、岡本医師宛の紹介状を持参した患者は岡本医師の診断、治療を受けることができました。岡本医師は小線源治療1000例以上の症例を持つベテラン医師です。
患者には、自分自身に関わる事項について自由な決定を行う権利があり、この権利を行使する前提として、必要な情報を得る権利を有しています。
医師が説明義務を負うか否かは、患者が、当該療法を受けるか否かについての熟慮・決断を助けるために必要な事項であるか否かという観点から判断されるべきです。
説明義務が果たされていない
成田医師は、患者に対してこう説明すべきでした。
同じフロアの別の診察室(小線源治療学講座)では、ベテラン医師による良好な成果を上げている小線源治療を実施していること。また、成田医師自身は小線源治療を実施した経験がないこと
その上で小線源治療を泌尿器科で受けるか、小線源治療学講座で受けるかについて自己決定をする機会を与える説明義務があったと考えます。
がんが再発すれば生命にもかかわることから、熟練した術者に施行してほしいと考えるのは患者としては当然の願いであり、少なくともその願いを叶えるための機会が与えられなければなりませんでした。
同一フロアの別の診察室にはベテランの岡本医師が診察をしていますから、成田医師が、患者の上記願いを叶えるのは容易でした。しかし成田医師はそれを怠りました。
これにより、成田医師が担当した23人の患者は、治療経験がないという事実を伏せられたまま、治療を待つことになり、その中の一人の患者さんは治療実施直前に他の科の医師からこれを知らされ治療を拒否する、という事態が起きました。
その後、残りの患者さんは、病院側から担当医が変更になると通知されただけで、その理由も病院からは明らかにされていません。これは、何も知らない患者に治療という名目で実験をしようとしたものとしか思えませんが、なぜそのようなことを泌尿器科ぐるみで画策したのか、その理由はわかっていません。
はっきりしているのは、これらの行為は成田医師の独断ではなく、科長である被告河内医師の方針であったということ、これらは容易に推認することができます。科長である河内教授の責任も重大であると考えます。また、少なくとも泌尿器科職員の一部はこの件を知っていたはずです。しかしそれを止めようとしなかったという点で同罪です。
詳しくは 滋賀医大事件記者会見説明要旨 を御覧ください。