前立腺がん患者用のQOL調査票であるFACT-P
このようにニュースで伝えられていますが、
滋賀医科大学病院で、前立腺がんの患者に説明もないまま「性機能」を尋ねる調査をした上、回答の一部が改ざんされた疑いがあるとして、患者らが厚生労働省などに調査を要請しました。
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20190110-00000010-jnn-soci
この記事だけで見ると、単に「性機能を尋ねる調査などけしからん、として患者が難癖をつけている」と思う方もいるかもしれないが、そうではない。
実は、滋賀医科大学病院で用いられたこの「調査票」は前立腺がん患者用のQOL調査票としてはスタンダードなものであるFACT-P(Functional Assessment of Cancer Therapy – Prostate)を用いたもので設問自体に問題はありません。問題なのはその実施方法です。
この調査票は「前立腺がん患者のQOLに関する質の高いエビデンスを得るための調査」であり、この調査票使用にあたっては、患者への説明と同意が義務付けられており、また氏名を特定できない方法で実施することが必須とされる。
しかしながら、滋賀医科大学付属病院ではこれが全く守られていませんでした。
また、それだけではなく、この調査は担当医に無断で行われました。
私達患者は、入退院時に「記入してください」と言われて手渡されただけです。当然、記入前に何の説明も行われていません。
また、本来調査票にはあってはならない「氏名」の記入欄が設けられており、氏名欄があるだけでも問題であるのに、少なくとも23名の患者さんの調査票に、本人以外の手によって氏名を書き込まれていることも確認された。
患者会で、FACT調査の版権を持っている、米国のFACT機構に問い合わせところ次のような回答が得られている
滋賀医大附属病院は確かにFACT調査利用の認証を受けているが、FACT調査はこの調査表使用の前提条件として説明と同意を得ることを前提としている。このことは全世界共通としている。患者への説明と同意を取らず、氏名を特定できる方法で調査を実施していたことは機構としては想定外のことである
問題なのは「性機能を含む調査を許諾なしに行った」とかのレベルではなく、FACT調査票を使用するにあたっての泌尿器科の姿勢です。質の高いエビデンスを得るため調査票を、その趣旨も知らせず、許諾も受けない、しかも本来匿名でなければならないFACT調査票に名前を記入させ、さらには書き足しや内容の改ざんまで行われていたのです。
滋賀医科大学付属病院の前立腺がん患者の受け入れ体制は、他院と少し違うところがあります。一般には前立腺がん患者は泌尿器科で診察を受けるのですが、滋賀の場合はこの他に前立腺癌小線源外来があり、泌尿器科とは独立した別の医師が担当しています。前立腺癌小線源外来で治療にあたっているのは岡本医師で、全国から多くの患者が小線源治療のために滋賀に訪れています。
前立腺癌小線源外来・岡本医師による小線源治療であっても、入院時は泌尿器科病棟を使います。問題であるとしているのは、このとき記入した「調査票」ですが、この調査は担当医(岡本医師)の指示ではなく、担当医に知らせることなく泌尿器科の指示で行われたことも大きな問題です。
これらから得られるエビデンスは真のエビデンスといえるのでしょうか。
国立病院の泌尿器科でおこなった調査としてはあまり妥当性に欠けると言わざるを得ません。
不適切な患者QOLデータ取得に関する調査依頼
厚生労働大臣 根本 匠 殿
文部科学大臣 柴山昌彦 殿平成31年1月9日
滋賀医科大学病院・泌尿器科、事務職員による不適切な
患者QOLデータ取得に関する調査依頼滋賀医科大学前立腺癌小線源治療患者会
今般、滋賀医大附属病院では、泌尿器科 河内明宏教授の指示のもとに施行されたFACT-P と呼ばれるQOL調査(FACT-Pについては後述)に関してさまざまな不正が認められるため、貴省に調査を要請いたします。既に朝日新聞により本件の概要が報告されていますが、本件に関する関連事実を以下詳細に申し述べます。
【関連事実】
2018年3月1日、滋賀医大附属病院小線源治療学講座で前立腺癌に対する小線源治療を受け、退院した患者さんが入院時・退院時のQOL調査(FACT-P)に不審な点を感じ、滋賀医大附属病院院長宛に書面を送付しました。
それに対して、2018年3月15日、泌尿器科河内明宏教授より「本来とるべきでない小線源治療患者に誤ってQOL調査(FACT-P)をおこなってしまった。不適切であったので診療録から削除する」旨の回答が当該患者さんにありました。その後当該患者さんが、担当医に問い合わせをおこない、診療録を確認したところ、河内教授より約束されたQOL調査についての記載が診療録から削除されていないことが確認されました。不信感を持った当該患者さんはカルテ開示請求をおこないました。 その結果、問題となったQOL調査表は7月31日 開示カルテを受け取る当日に、下記にあるとおり病院事務職員によって消去されたことが判明しました。いっそう不信感を募らせた当該患者さんは、(1)誰により何時診療録からQOL情報が削除されたか。(2)それが削除された原因はカルテ開示請求が出されたからかを問う質問を、滋賀医科大学付属病院医療サービス担当係宛に送付しました。これに対して、医療サービス課患者サービス係の職員Y から「7月31日に自分が削除した」旨の回答が、8月17日(当該患者受領日)にありました。以上のやりとりの事実関係は当該患者さんから報告を受けた私ども患者会と病院側、河内教授でやりとりされた質問と回答を参照下さい(資料A, B, C, D 参照)。また医療サービス課職員によるカルテ変容の証拠(資料E)も参照。(註:添付資料については該当患者諸氏から開示許諾を得ています)。
【関連事実が示す問題点】
当該患者と河内教授・滋賀医大附属病院とのやりとりにより、結果として不正・あるいは違法行為が極めて強く疑われる事案は以下の通りです。
1 医療サービス課患者サービス係の職員Yがみずから認めているとおり、診療録の変容(あるいは改竄)が医師ではなくもっぱら事務職員の判断と、行為により行われたことは〈公文書変造罪(刑法155条第3項)、公用文書毀棄罪(刑法258条)〉の嫌疑があること。他方、このことは事務職員の判断で到底おこなえるものではなく、泌尿器科河内教授の命令により行われた可能性が濃厚であること。
2 調査票の内容を複数の事務職員が勝手に書き換えた疑い。
患者会の調査によれば上記当該患者以外の複数の患者においてQOL調査表の名前や内容が本人以外によって記載された疑義が極めて濃厚であること。3 FACT機構が定める倫理手続きが守られていない疑い
今回問題となっているFACT-Pと呼ばれるQOL調査について説明します。
FACT-PはFunctional Assessment of Cancer Therapy – Prostateとして前立腺癌患者のQOL調査表として米国のFACT機構が作成し、版権を有し
本来研究目的として使用許可を出しているものであります。患者会としてFACT機構に直接問い合わせ(資料1)をしたところ滋賀医科大学 泌尿器科のおこなったFACT-P調査において以下の倫理違反が明らかになりました。
まず添付のFACT機構からの回答(資料2)にあるとおり、FACT-P調査においては被験者つまり患者への説明と同意が必須条件である。いっぽう、今回滋賀医科大学 泌尿器科が行ったQOL調査(FACT-P)は、患者への説明もなく、患者からの同意を得ることもなく 事務員からの患者への記載要請のみで実施されていること (資料3)。また本来無記名の調査様式であるべき書式に対して滋賀医大附属病院が無断で記名欄を付け加えた上に(「著作権侵害」の嫌疑)、その記名欄に患者に無断で病院の人間が患者氏名を記入したことが強く疑われる事例 (資料3) がカルテ開示により多数見受けられる(「公文書変容」の嫌疑)、ことが大きな問題であると認識いたします。上記の事実関係に鑑み、貴省におかれましては滋賀医大附属病院に対する適切な調査及び対処を、監督省として行われたく、ここにお願いするものです。
-具体的証拠は別紙1、
-「性機能の調査。利用目的を説明せず実施 滋賀医大病院」朝日新聞DIGITAL
http://urx.red/OBJs
メディアでの掲載
デジタル鹿砦社通信 │ 滋賀医科大学附属病院の不適切QOL調査を患者会が文科省・厚労省へ申し入れ
滋賀医科大学病院の医療書類の改ざん問題、背景に大学病院の闇 | MEDIA KOKUSYO
メディアでの掲載参考リンク
https://www.nara-np.co.jp/global/2019010901001941.html
http://medica.sanyonews.jp/article/10069
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2019010901001941.html
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190109-00000181-kyodonews-soci&fbclid=IwAR2TwIw-FfgbCHaI312f7ar149zv3axmwnteYx2j6-w4V1ctIOJd-pFPpjs
https://www.jomo-news.co.jp/news/domestic/science/104130
http://www.shikoku-np.co.jp/bl/news/national/health-detail.aspx?kid=20190109000652