2018年7月29日の朝日新聞報道への大学の見解
朝日新聞で報道されると、8月30日付で「患者側の一方的かつ事実に反する意見」であるという見解が、滋賀医科大学 附属病院のホームページに掲載されました。その対応は素早いもの。内容は以下の通り。
滋賀医大削除済
滋賀医科大学泌尿器科学講座|当講座医師に関する新聞報道について
7月29日の朝日新聞に患者らによる本学附属病院の医師提訴にかかる報道がなされました。報道は、患者側の一方的かつ事実に反する意見をそのまま掲載したものであり、極めて遺憾であります。本学附属病院ではこれまで通り適切な情報提供を行うとともに、最適で質の高い医療の提供に努めて参ります。
平成30年7月30日 国立大学法人滋賀医科大学長 塩田浩平
滋賀医科大学泌尿器科学講座医師に関する新聞報道について
[患者会保存版] 滋賀医科大学泌尿器科学講座医師に関する新聞報道について
[web.archive.org] 滋賀医科大学泌尿器科学講座医師に関する新聞報道について
これを読むと、患者への説明責任に対しては、一人の患者は「准教授にとっての最初の小線源治療」を了承した、それ以外の患者には治療の2 週間前に許諾を得ることになっていたとしています。
この最初の患者さんとご家族には、准教授にとっての最初の小線源治療であることをお話しし、了承を得たことを記録しております。また、その後の患者さんに対しても最終的に治療を行うことやその方法などが決定される治療約 2 週間前にお話をし、承諾を得ることになっておりました。
つまり、一人の患者以外は、「准教授にとっての最初の小線源治療」ということを話していないということが明らかです。また文全体が未経験であっても治療に問題はない、ということの言い訳にそのほとんどを費やしており、「優先すべきは患者の利益であるという視点に欠けている」ということがおわかりいただけると思います。
仮にこれが言い訳でないとするならば、これを学長名で掲載していることを考えると、泌尿器科の信頼だけでなく、大学病院全体の信頼度を著しく低下させかねない、より大きな問題です。
患者会の見解
私達患者は、本件は治療を受けている患者、および今後治療を受ける予定の患者にとっても大きな問題であると言う共通認識を持ち、患者間で連携して動くことを決め、公にはしてはいませんでしたが昨年(2017)から弁護士に依頼し、何度も大学及び大学病院に対して本件の説明と謝罪、さらには説明会を開くよう要求してまいりました。
大学側と交渉で意味のある回答は示されなかった
また、それと平行して患者それぞれが大学や病院に対して、病院のご意見箱の利用やメール、郵送など様々な方法で強い抗議をしてきましたが、それに対する意味のある回答はなされませんでした。(誠意の感じられないテンプレートのような返答がたまにあるだけでした)
実は私達患者は、昨年から弁護士を交え、この問題で訴訟を起こすことは問題解決に繋がるのかどうか、ということも検討していました。当初は、訴訟による解決は難しいと考え、患者の代理人弁護士が粘り強く大学側と交渉すること、患者個人が強い抗議の姿勢を示すこと、この2つを続けてきました。しかし先に述べたように大学側から意味ある回答はなされませんでした。そればかりか、本件と直接関係のない、岡本医師の治療を打ち切るという通告がすべての患者に対してなされました。
争いごとではない、やむなく世間に問うための手段です
この大学の対応は、不当な治療を受けて苦しむ患者への謝罪をしないばかりか、その被害の実情の証言が得られるであろう現在の担当医(岡本医師)を大学から排除し、この問題そのものの追求をより困難にする行為です。
このままでは、真相の立証が難しいと考えた私達患者は、やむなく泌尿器科学講座の教授、准教授を提訴し、この問題を広く世間に問うことにしました。
一見すると、この問題は、病院の対応に不満を持った患者が団結して、何か身勝手な要求を通そうとしているのではないか?、あるいは大学内の単なる権力争いではないか?、と思われるかもしれません。
しかし、そうではありません。
また、前立腺癌の患者であり治療の事情に詳しい方が、本件を「そのような争いごとには関わりたくない」と評されたことがありますが、「争いごとと、一括りにされたこと」をたいへん残念に思います。
私達は、何も争うつもりはありません。
組織的に患者を誘導した病院側に責任がある
争うつもりはありませんが、私達は、被害を受けた患者さんに「大学病院とは所詮そのようなもの、組織相手に戦っても勝てません、諦めてください」とは言うべきではないと思いました。
仮に、被害を受けた患者さんが、疑い深く担当医の経歴などをネットなどで調べれば、何人かはこの病院の問題に気づくことができたかもしれません。その点を指摘して「自己責任であるからしかたがないのでは」という意見も一部にありました。
しかしそれは違います。患者の意思決定に対しては、事前に治療に関する公正な情報を提供をすべきであり、それを怠ったことにより、患者が不利益を得たのですから責任は全面的に病院にあります。
また、自己の危機管理という点で、いまやネット検索は必須といえるものですが、誰でも検索が容易にできる、と考えるのは早計です、特に60代以上に患者層のピークを持つ前立腺癌患者では高齢の方も少なくないため、パソコンが使えない方もいます。
悪いのは、組織的に患者を誘導して、未経験を隠した医者に診察をさせる、ということを行った病院側です。病院を信頼して訪れた正直な患者が不利益を受けることになってはなりません。
治療を待つ方の気持ちに応えたい、自分の治療のためではない
今回の訴訟の件で、積極的に動かれている方の多くは、治療が終了し予後の心配があまりない方です、仮に訴訟の結果が不満でも、滋賀の治療が終了したとしても、大きな影響は受けません。
しかしながら、今回の件で滋賀医大は揺れています、癌と告知され治療を待つ方の非常に心細い気持ちも一番よくわかっています。そのような方が安心して治療を受けられるように、ダメなものはダメとしてきちんと抗議し、泌尿器科の治療そのものを再構築させない限り本件の解決には至らないと考え、私達はやむなく控訴することにしたのです。
しかしながら今回の提訴の動きが伝えられると、直ちに附属病院のウエブサイトに「医師提訴にかかる報道に対する報道は患者側の一方的かつ事実に反する意見」であるとする大学からの声明が発表されました。しかも、この問題に対して、まるで今まで何も聞いていないかのような反論をしています。
私達は、昨年秋から非常に多くの声を大学に届けていました。それを実質無視し、説明会の開催要求も無視していながら、「一方的かつ事実に反する意見である」という反論は、極めて遺憾です
さらにこちらをお読みください:
小線源治療に対して、非常に甘い認識を持つ泌尿器科教授
2018年7月29日の朝日新聞報道
朝日新聞デジタル:「医師、未経験の治療だと説明せず」 がん患者ら提訴へ
医療安全の規制が強化される中、今回の訴訟は医師の治療経験を患者が治療法を決める際に必要な情報とし、提供を怠った医師の説明義務違反を問うものだ。
患者の代理人によると、准教授が計画していたのは、微弱な放射線源を前立腺に入れる「小線源治療」。同病院では泌尿器科講師が2005年に開始。この医師が米国の拠点施設で始められた治療法を発展させた独自の技法を開発し、15年1月に小線源治療に特化した寄付講座の特任教授に就任し、年間約140件行っている。
泌尿器科教授と准教授は15年春ごろから、特任教授とは別に小線源治療を計画。この治療を希望した患者で紹介状に特任教授や寄付講座の名がない20人余りを特任教授に回さず、小線源治療の経験がない准教授の担当とした。
小線源治療の習得には指導医の下での研修が必要とされるが、准教授は特任教授から治療に必要な技術などを学ぼうとはしなかったという。特任教授は准教授が治療すれば患者に深刻な不利益を与えると考え、15年11月に学長に治療の中止を求め、准教授の患者は特任教授が担当することになった。
「医師、未経験の治療だと説明せず」 がん患者ら提訴へ:朝日新聞デジタル
16年秋に准教授の小線源治療を受ける予定だった男性(75)は未経験であるとの説明を受けておらず、16年1月に准教授による小線源治療の中止が決まった後もただちに知らされなかったという。
滋賀医大は朝日新聞の取材に、「泌尿器科の専門医であれば、経験のある医師の指導の下に行えば問題ない」と文書で回答した。病院は昨年12月、寄付講座を19年末で閉鎖することを公表。特任教授の雇用任期も同時に終了する。患者らは今年6月、患者会(会員約300人)を結成。未経験医師による治療計画や寄付講座閉鎖についての説明会開催を学長らに求めているが、大学側は応じていない。(出河雅彦)
「医師、未経験の治療だと説明せず」 がん患者ら提訴へ:朝日新聞デジタル
2018年7月29日の朝日新聞報道
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小線源治療に対して、非常に甘い認識を持つ泌尿器科教授