病院は2019年7月から別の医師らによる小線源治療を実施すると宣言

病院は、2019年7月から「泌尿器科の医師ら」による標準的小線源治療を実施すると宣言したが、その実体は不透明なもの

滋賀医大病院における、前立腺癌の治療の現状

前立腺癌の治療は、泌尿器科で診察を受け、担当医の助言と本人の意志で「放射線療法か手術療法か」などの治療を選択するというのが一般的です。
しかし、ここ滋賀医大では、小線源を中心とする治療の症例数が圧倒的に多く、その他に外照射治療とダビンチによる摘出手術が行われています。
3つの治療が、別々の外来で行われているという他院とは少し違った状況ですが、前立腺癌密封小線源外来は、泌尿器科外来と同一の受付、診察室も同一フロアでした。(2018年現在は別フロアに移動)

前立腺癌密封小線源外来 寄附講座「前立腺癌小線源治療学講座」
小線源治療 (内分泌薬併用治療を含む)特任教授 岡本圭生
泌尿器科受付で対応し、診察室も泌尿器科ブース。多くの方が他の医療機関からの紹介で訪れる。
(2018年現在は、放射線科受付で対応)

泌尿器科外来 泌尿器科学講座 河内 教授
ダビンチによる摘出手術 内分泌薬治療 成田 准教授
泌尿器科受付で対応し、診察室も泌尿器科ブース、従来は小線源希望者を岡本医師に紹介していた。

放射線科外来 放射線医学講座  
小線源併用治療における放射線外照射   放射線外照射単独治療(IMRT)
泌尿器科、または前立腺癌密封小線源外来からの紹介で、放射線科による対応。

2018.06.25に公開された大学病院からの告知

大学病院によれば、岡本医師の小線源治療は平成31年末日で終了する。ただし、術後の経過観察期間6ヶ月を確保するため、手術の実施はその6ヶ月前迄とする。理由として:前立腺癌小線源治療学講座は、最大5年間の期間限定で設置しているためとしている。

新規患者への対応:
平成31年4月頃から泌尿器科において小線源治療のための診察を開始し、平成31年7月からは泌尿器科で小線源治療(手術)を開始する予定。治療は、ガイドライン等に基づく標準的な小線源治療

既存の患者への対応:
平成31年6月迄に小線源治療を完了すること、その後は泌尿器科で経過観察、または他院へ紹介を選択
平成31年7月以降の手術予約及び平成32年1月以降の診察予約は無効とする

 2018.06.25 大学病院の告知原文

前立腺癌密封小線源治療について
2018.06.25
研究・教育を主な目的として最大5年間の期間限定で設置している本学寄附講座「前立腺癌小線源治療学講座」(期限:平成31年12月31日)が運営する「前立腺癌密封小線源外来」における岡本特任教授(雇用任期:平成31年12月31日まで)の小線源治療は、術後の経過観察期間が必要との判断から、手術実施を平成31年6月末日までとしております。このため、前立腺癌密封小線源外来では平成31年7月以降の手術治療を実施いたしませんが、術後患者さんの経過観察等の診察は、寄附講座設置期限の平成31年12月まで継続いたします。

このことに関して患者さんからご意見やご要望等を多数いただき、ご心配をおかけしておりますが、本院では、常設の小線源治療外来として、平成31年4月頃から泌尿器科においてガイドライン等に基づく標準的な小線源治療のための診察を開始し、平成31年7月からは泌尿器科で小線源治療(手術)を開始する予定で準備を進めております。

なお、これまでに本院で小線源治療を受けられた患者さんは、今後も本院泌尿器科において責任を持って経過観察又は患者さんのご希望に沿って他院へ紹介等の対応をさせていただきます。

また、前立腺癌密封小線源外来における平成31年7月以降の手術予約及び平成32年1月以降の診察予約は無効となりますのでご注意ください。本院における常設の小線源治療外来は、上掲のとおり本院泌尿器科が担当することとなりますので、ご了承いただきますようお願いいたします。

滋賀医科大学医学部附属病院
http://www.shiga-med.ac.jp/hospital/doc/message/20180625.html

これによれば ”小線源治療の継続は2018年から2年間とし、最後の半年間は治療を認めない”というものです。当然のことながら、この告知に対し、患者および患者会は強い抗議の姿勢を示しました。告知の内容について検討してみましょう。

標準的な小線源治療を実施

岡本医師の治療期間終了後、新規に「標準的な前立腺癌密封小線源治療」を行うというものです。
標準的な、とは岡本医師のような高線量インプラントではなく、一般的な線量の小線源治療のことを示していると思われます。他院と同等の小線源治療を行うと言う意味であり、小線源治療における滋賀の優位性は完全に失われます。
大学側が「標準的」という言葉を持ち出したのは、岡本医師の治療は「標準的とはいえない治療」である、あるいは「標準を逸脱した治療」であるから打ち切るのだ、という大義名分がほしいだけである。もし「標準的な小線源治療」に変わったなら、県内の方以外誰もこなくなることくらい「わかりきったこと」です。しかし病院側だって「それは百も承知」。
つまり、根治性が従来より低下することになるが、患者には「標準的な治療」と説明すれば責任は問われない。小線源治療における滋賀の優位性など、どうでも良いことだと思っている。そこまで馬鹿げた理由づけをしてでも岡本医師を排除したい、ということのよう。

今まで日本でもトップクラスの治療を提供してきたにもかかわらず、今後は「根治率があきらかに下がる治療を実施する」と世間に宣言しているのと同じことです。国立の大学の付属病院なのだから、明日の前立腺癌治療を支えるような技術を評価すべきであるのに、それを排除し、標準的な治療を提供するというのを堂々と公表するのですから、そのあまりの志の低さにあきれます。国立大学がこれほどあからさまに患者不在の姿勢を明確にしたのは、本当に驚くべきことです。

岡本医師の治療こそ、将来の小線源治療の規範となるべき技術で、そのことが”外部企業から支援を得られる理由”です。
標準的な小線源治療というと、それが本筋であるかのような表現に聞こえますが、多数の病院で行われている一般的治療ということにすぎません。最先端の小線源に比べ照射線量の不足はあきらかですから、はっきりと言えば、その治療内容は未完成であり、発展途上のものです。それを変えるべく技術指導を行っている医師の一人が岡本医師であるというのに、その医師を排除し一般的な小線源治療を導入するなど、時流に逆らう行為であり非難されるべきことです。
標準を逸脱しているのは、岡本医師の治療ではなく、滋賀医大の判断です。

これまでに治療を受けられた患者さんのご希望に沿って
本院泌尿器科で経過観察もしくは他院へ紹介等いたします。

現在の患者は、泌尿器科で別の医師の経過観察を受けるか、紹介状を持って転院するかという選択を迫るつもりのようです。
一般的な大学病院であれば、担当医が変わることなど普通にあり、告知なく大学の都合で、治療予定の先生が変更されることもあるでしょうから、これ自体を問題にすることはできないように思います。
しかしながら、滋賀医大・岡本医師の場合は他の大学病院とは違って、岡本医師がいなくなれば、同等の治療は提供できなくなるため、治療は中止するしかありません。治療の中止は患者の命に直結しますから、そうなれば多くの患者が騒ぐに決まっています。それをこのように事前に告知することで、患者に騒がれることを防ぐという考えによるものでしょう。

この告知から言えることは、大学の行動のすべては自分たちの組織を守るため、「患者の命を優先する」という考えはない、ということがわかります。