小線源単独 宇治病院 堺 坂本

お住まいの地域:大阪府

治療を受けるまでの経緯は?

2004年に60歳で製薬会社を定年退職後、薬剤師や日本語教師のアルバイトをしつつ、妻との旅行・週1回の食料品まとめ買い・家事分担、娘2人息子1人・その連れ合い・孫8人との交流、読書、クラシックCD鑑賞、中国語受講、家庭菜園、1日1万歩の散歩・1時間の柔軟体操、サイクリング、インラインスケート、スキー、大型バイク、パラグライダーなどを楽しんできました(2022.7現在:77歳、アルバイトと大型バイクは卒業しています)。

2009 ~ 2016:B病院での毎年のドック検診で、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)が2.4 から3.4 ng/mlへ漸増。

2017 ~ 2020:17年のドックでPSAが4.258と基準値(~4.0)を越えたため、同院の泌尿器科を受診。MRI(磁気共鳴画像)や前立腺触診で異常を認めないことから、毎年のドックでPSAを経過観察することになった。PSAは4.258 → 4.718 → 4.586 と推移し、20年に6.000を示した。

2020.7~9:7月のMRIで前立腺に肥大を認め、辺縁域左側に癌の可能性を否定できないとの診断。
8月の経会陰式前立腺生検で、採取12か所中5か所に癌細胞を確認。癌細胞の悪性度を示す段階では、グレード4(悪性度:中)の細胞が多く、その次に多いのがグレード3(悪性度:低)との病理診断(グリソンスコア:4+3)であった。
9月の骨シンチグラフィーやCT(コンピューター断層撮影)で転移を疑うような所見を認めず、「転移のない中間リスクの前立腺癌」との診断。主治医から同院でのダビンチを用いたロボット支援前立腺全摘除術を提案されたが、ダビンチ手術のあと数年で再発した友人のこともあり、高齢を理由に辞退すると、「最新の放射線療法である重粒子線が健康保険適用になったので、大阪重粒子線センターで治療を受けるといいですよ。照射の前から始める併用のホルモン療法はB病院でできます。来週からでも始められますよ」と提案された。

2020.9~10:主治医から「前立腺癌の治療はいろいろあり、情報がネット上で検索できるので、治療法を検討されたらどうですか」と勧められ、ネット検索に没頭、腺友クラブを発見。腺友クラブの動画サイトで各領域の専門家の講演を聞き、前立腺全摘除術、放射線療法、ホルモン療法、監視療法などを勉強し、以下のように理解した。

1. 前立腺全摘除術は、前立腺を丸ごと摘出するので根治的治療法と言われているが、30%くらいの症例で癌が再発する。前立腺が摘除されているのに再発するのは、前立腺の被膜を越えて存在する微小な癌が術前の検査では見つからないためである。有害事象としては、前立腺内の尿道や前立腺の被膜外に隣接している男性機能関連神経・精嚢も前立腺と共に摘出されてしまうことによる排尿機能や男性機能の障害が問題となっている。対策として尿道括約筋や神経の温存があるが、温存できる程度は各症例によって異なり、その効果も術後になってみないと分からない。ダビンチ手術は、旧来の手術に比べて、手術視野拡大や手振れ防止などの術者利点と手術侵襲が軽く社会復帰が早いという患者利点はあるが、癌再発率や有害事象では明確な優位性はない。

2. 放射線外照射療法は、放射線を体の外から前立腺に向けて照射する。制癌効果は放射線量に比例する。放射線は直進するので、前立腺の前後に位置する膀胱・尿道・直腸・男性機能神経にも放射線が照射されてしまう。IMRT(強度変調放射線)・陽子線・重粒子線など最新の線種・機種・技術を用いると、放射線の前立腺に対する集中性が上昇することから、前立腺への線量を高めて制癌効果を上げることができるが、周辺臓器に対する線量もある程度は高くなり、有害事象の発現は避けられない。

3. 放射線内照射療法は、到達距離が短い(数mm程度)放射線を出す小線源(長さ4.5mm、直径0.8mmのチタン製カプセル内に放射性ヨウ素125が密封されている)を50~100個、前立腺内に留置する。前立腺内から前立腺に限局して制癌に十分な高線量の放射線を照射することができる。前立腺内の尿道には線量が低くなるよう調節され、膀胱・尿道・直腸・男性機能に対する有害事象を低く抑えることが可能である。放射線は徐々に弱くなり1年でほとんどゼロになるが、カプセルは留置のままで取り出さない。この療法は一般的に小線源療法と呼ばれ、低リスクや一部の中間リスク症例では単独治療が多いが、中間~高リスク症例では放射線外照射療法とホルモン療法を併用すること(トリモダリティー治療)で有効性が上昇するとされている。

4. 癌が前立腺から転移している場合は、前立腺に限局した癌に対応する前立腺全摘除術や放射線療法のみでは対処できず、ホルモン療法の出番となる。前立腺癌は男性ホルモンに依存して成長するので、薬剤によって男性ホルモンの作用を遮断すると、癌の増殖を抑制することができる。この療法を一般的にホルモン療法という。しかし、治療が長期に及ぶと、癌は男性ホルモンなしでも成長できるように変異し、CRPC(去勢抵抗性前立腺癌)となって再発する。また、男性ホルモンは正常な身体活動上必要なホルモンなので、遮断状態が続くと、骨粗しょう症・糖脂質代謝異常・認知機能低下など種々の成人病的な有害事象が発生する(老化が促進される)と指摘されている。

5. 監視療法は、すぐに治療を実施しなくても予後に悪影響を及ぼさないと考えられる悪性度の低い前立腺癌患者に対して、定期的な検査下に経過を観察しながら、治療が必要な時期を見つけていくという一種の療法である。早々に治療を実施すると、その時点から有害事象によるQOL(生活の質)の低下が問題となるが、監視療法中はそれが回避できる利点がある。一方で、悪性度が低いとされた症例中にも一定の割合で悪性度の高い癌が含まれている危険性があり、監視療法開始1年後の生検では、30~40%の症例が悪性度の高い癌へと診断が変更されるという。

6. 腺友クラブの動画サイトで勉強中、岡本圭生先生(講演当時、滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座特任教授)の講演に目が釘付けになった。先生が通常の小線源療法を発展させた「10 Step 法」を開発した結果、小線源を適切な位置にミリ単位の厳密さで配置することが可能となり、「転移のない前立腺癌に対して論理的に必要十分な線量を被膜外も含めて投与すれば、局所再発ゼロで合併症も許容できる範囲にとどめられる。中間リスクにはホルモン療法も外部照射も基本的に不要である」と断言されていた。また、「治療後、再発の不安や副作用に悩まされることなく、満足度の高い人生を過ごせていることをGood Survivorshipというが、初回治療で完治して前立腺癌と縁が切れることがすなわちGood Survivorshipである」とし、道元禅師や宮沢賢治の言葉を引用しながら、「助け合い、喜び・悲しみを分かち合い、人の幸せを願うというのは、人の本来善でありましょう」と結ばれていた。先生の「患者第一の考え方」に感銘を受けた。

7. 前立腺癌治療に関する以上の理解に基づき、岡本先生への転医を決心。先生の現在の所属先である「宇治病院」のサイトから岡本先生の「前立腺がん治療で大切なこと」の文書と転院書類を打ち出し、B病院の主治医に持参、宇治病院への転院と岡本先生当ての紹介状を依頼した。主治医は、当日からホルモン療法を開始する準備を整えていたが、私の申し出を快諾され、その場で紹介状、病歴の入ったCDを作成、生検時の癌細胞プレパラートを手配して下さり、「また、いつでも来てください」の言葉をいただいた。後日、プレパラート返却時にお会いし、岡本先生の治療を受けることになったことを報告するとともに、癌を見つけて頂いたことに対して御礼を申し上げた。

PSA:9.469
グリソンスコア:3+4
陽性率:41.7%(生検 12本中 5本)
T分類:T2c
診断時年齢:77
触診の結果は?:結節なし。前立腺体積24.19cc
(陽性率は最初の生検時、それ以外は治療直前)

治療後にどう感じましたか

治療予定の方は現在の気持ち

2020.10.14:宇治病院泌尿器科 岡本圭生先生を受診。

(先生):持参資料をみると、MRIで右葉に楔状の病変があります。生検標本のグリソンスコアはせいぜい4+3、今日の検査では、PSAが5.546、直腸診で結節はなく、前立腺体積は24ccでさほど肥大していません。基本的に高分化型(転移の起こりにくい型)前立腺癌で、すぐに治療する必要はありません。定期的に検査をしながら、経過を観察する監視療法が可能です。

(私):岡本先生の講演を腺友クラブの動画で聞き、感銘を受けました。あと10年生きたいので、先生の小線源療法を,是非受けたいです。

(先生):(真面目な顔で)今、75歳、あと10年生きて何をするつもりですか?老化が進んで、生きているのがシンドクなりますよ。今の元気さで10年生きられると思うのは甘いです。

(私):(意外な質問に、ちょっと変わったオモロイ先生やなと思いながら)私にはまだ幼児の孫達がいるのですが、彼らに記憶が残る10歳過ぎまで生きていたいのです。昔は短命でしたから、私が物心ついた頃にはジジババ達は死に絶えており、ジジババに可愛がられたという至福の記憶が一切ありません。それが誠に残念至極。先生の小線源療法でGood Survivorshipとなり、「元気なジーちゃんが可愛がってくれたなー」という記憶を孫達に残したいのです。

(先生):そういう「生きる目標」もあるんですねー。宇治病院での小線源療法は現在準備中で、来年後半には開始できる予定です。坂本さんは年齢に比べて身体能力が若いから、治療対象として考えていきましょう。

(私):有難うございます。これで肩の荷が降りました。

2020.12 ~ 2021.02:PSA 6.083 → 6.126

2021.04:経会陰式前立腺生検(1泊2日)。
小線源治療をするにあたって、小線源の留置場所と個数を決定する上に必要な前立腺内の癌の分布を確認するためにSaturation生検を施行。細胞採取場所(50数か所)を、前立腺全体に偏りなく散らして検査した結果、私の癌は、悪性度がグリソンスコアで3+4(グレード3の細胞が一番多く、その次に多いのがグレード4の細胞)、癌の進行度がT2c(前立腺内に限局する腫瘍で両葉に進展している)の中間リスク癌であり、「小線源高線量単独治療の適応である」との診断を受けた。

2021.5~6:PSA 6.682。
5月の胸腹部造影CTで、リンパ節腫大なく、明らかな遠隔転移なし。

6月の骨シンチグラフィーで、骨転移を疑うラジオアイソトープの異常集積なし。
小線源治療の実施日が来年1月17日に決定。

2021.7~2021.11:PSA 6.351 → 8.662。

11月のCT検査で、小線源治療の予後に強い影響を与える肺癌・膵癌など内臓悪性腫がないことが確認され、小線源治療の実施予定日に変更なし。

2021.12:PSA 9.469。来月17日の小線源治療実施に先立つ家族帯同の「プレプラン」で以下を実施。
①同意書に署名(治療に関する同意。治療者カード携帯と治療後1年以内にいかなる原因で死亡した場合も、剖検で小線源を取り出すことに対する同意)。
②治療計画のための診察(手術室で、治療当日と同様に、手術体位をとり尿道チューブと超音波検査の直腸プローブを挿入、前立腺の形態を3次元的にコンピューターに取り込み解析し、小線源の留置場所や必要個数の決定に役立てる)。

2022.01.17:密封小線源前立腺永久挿入単独療法を実施(2泊3日)。
岡本メソッド(10 Step Method)に従い、超音波で前立腺の画像をモニターしながら、前立腺の各部位に必要な放射線量が得られるよう設定された場所に、ミリ単位の厳密さで会陰部から34本の太い針を刺し、針を経由して合計 95個の小線源が留置された。放射線量は、前立腺本体中の癌細胞および再発の原因となる前立腺被膜外の微小癌細胞を死滅させるに必要十分な高線量であり、一方、有害事象を抑えるため、尿道や直腸に近接する部位には低線量となるように設定された。

現在の経過、伝えたいことなど

差し支えなければ、男性機能はどうなりましたか?、教えてください。

1. 手術室で、岡本先生の「坂本さん、予定通り終わりましたよ」の声に、「有難うございまーす」と応えた。病室に搬送され、ベッド上で天井を見上げていると、前立腺癌が見つかってからこの1年半のことが頭に浮かんできた。前立腺癌を発見し、治療法のネット検索を勧めてくれたB病院の主治医、腺友クラブのサイトと岡本先生の講演動画との遭遇、岡本先生が受け入れ可能なタイミング、小線源単独治療の適応となれる病態であったことなど、幸運が重なり、「私がベストと思う医師から私がベストと思う治療を受けることができた」。最近、安江博 著「一流の前立腺がん患者になれ!最適な治療を受けるために」を読む機会があった。安江さんは提言している:「一流の治療を受けたいなら、一流の患者になれ!患者自らが有用な情報を知人、ネット、セカンドオピニオンなどありとあらゆるところから集める。そして一流の患者として、自分の命への処方をくだすことが最善ではないか」。振り返ってみると、幸運に支えられたとはいえ、私は「一流の前立腺がん患者」だったと思う。

2. 治療実施の翌朝、点滴カテーテルと導尿チューブを付けたまま、歩いてCTとレントゲン検査に向かう途中で、隣室のご同輩と一緒になった。彼は、昨日私の直前に治療を受けた50代とも思える若い人で、九州の人だという。彼の「自分の命だから、後悔しないように、ここまで来ました」の言葉に同感、たちまち打ち解けて話が弾んだ。検査の後、岡本先生の回診があり、「昨日の治療は予定通りで、今朝の検査で小線源が予定の位置に留置されていることを確認しました。会陰部にも異常なく、血尿もないのでこれから退院してもOKです」の言葉を頂いた。私の心はGood Survivorshipへの切符を手に入れた満足感でいっぱいだった。

(1)治療後1か月まで
①点滴カテーテルと導尿のチューブが外され、ベッドから立ち上がったとき、尿意がないのにシ○コがツツーッと出た感じがした。トイレで確認すると、シ○コばかりかウ○コも漏れていた。帰宅の道中が心配なので、看護師さんにお願いして、パンツ型おむつの中に更にパッドを入れてもらった。Saturation生検のときにも同様の経験があった。プレプラン時には、病院から出る前にシ○コを出しておこうと、男性小便器の前に立って下腹に力を入れたらウ○コが漏れてしまい、処理に往生した。導尿チューブや超音波直腸プローブの挿入で、尿道や肛門の括約筋が引き伸ばされるが、私のような高齢者では伸びきってしまい、回復に時間がかかるのだろう。帰宅後は、尿意・便意のない漏れはなかったが、何か作業中に尿意・便意を感じて、「ちょっと我慢」と思っていると、我慢が効かないことがわかり、早々にトイレに行くことを心掛けた。

②排尿:治療前に病院で頂いた小冊子「前立腺癌あれこれ」に、「治療直後から半年ないしは1年間は尿が出にくかったり、尿が近くなったりなどの症状が見られることがある」との記載がある。治療後、尿を出やすくする薬(一般名シロドシン、尿道を拡張する作用がある)が処方され、1回1錠(4mg含有)を朝夕2回毎日服用した。私には以前から過活動膀胱の傾向があり、散歩中や台所の水仕事の最中に尿意切迫が起きやすかった。2~3回の夜間尿もあり、1日の排尿回数は10±2回程度であった。治療後、排尿状況や回数には明らかな変化はなかったが、出始めに若干時間がかかり、勢いもちょっと弱い感じがした。過活動膀胱による尿意切迫は、我慢していると尿意が一時的に消えるのであるが、治療後は我慢が効かなくなり少量だが漏れるようになった。対策として、一番薄い尿漏れケアパッド(ライフリー社の男性用さわやか超うすパッド10cc)を普段はいているパンツの中に貼り付けることにした。

③排便:退院後1日3~4回の軟便が数日続いたが、入院中の抗生物質(セフォチアム)点滴と退院後3日間処方されていた抗生物質(フロモックス:1錠100mg、1日3回内服)による腸内細菌叢の乱れのせいと考えていた。ところが、抗生物質の服用期間が終わっても排便回数は減らず、逆に徐々に増加、1週間くらいで最多の1日18回となった。便意切迫でトイレに駆け込み、便座に座ると「スポンッ」という感じで少量の軟便が出て、肛門が「じわーっ」とかなりの強さで痛んだ。鎮痛作用と抗炎症作用のある市販の痔の薬(ボラギノールA)を使ってみたが、痛みに効果はなかった。

その後1日15回前後の頻便が1週間ほど続き、家にいれば容易に対処できる症状とはいえ、外出時が心配だった。外出時のトイレに行きつくまでの漏れ対策として「パンツ型のおむつ」と「おむつ内に貼るパッド」を購入した。一回の排便量が少ないので、漏れた場合もパットだけ取り換えればよい。これは私がドラッグストアでアルバイトをしていた時に少量便漏れのお客さんに勧めていた方法だが、私が実際に使用する前に、便意切迫回数が徐々に減り、一週間くらいで1日3~4回までに治まって、一息ついた。便漏れは当初の数回のみで、以後、経験していない。便意切迫については「放射線の影響で直腸が過敏になり、大腸から少量の便が送り込まれると、蓄便できず、すぐ便意として反応するのかなー」などと考えたりした。服用しているシロドシンの添付文書をネットで検索すると、副作用の中に「下痢、軟便、排便回数増加、肛門不快感」があった。私の頻便は、放射線の影響? 薬剤の影響? 両者の相加的作用? それにしても、放射線はそれほど減衰していない時期だし、服薬も続けているのに症状が治まったのは不思議だった。身体の適応力なのだろうか?

④Saturation生検時も治療時も、会陰部から数十か所も太い針を刺しているにもかかわらず、麻酔が醒めても全く痛みがなく、翌日からも寝ても立っても歩いても違和感がなかった。ただ会陰部が膨らんでいる感じがして、椅子に座りにくいので、会陰部保護のため座面にクッションを使用した。クッションは首に巻きつける機内用の枕を転用した。前が空いた形で、会陰部保護のためにピッタリだった。元々携帯用なので、通院の電車内でも使えて便利だ。

⑤治療後1か月の診察(2022.2.17):胸部・腹部のX腺検査の前に、放射線医の問診があり、主に排尿・排便の状況について報告した。「肛門が痛むのは頻便のせいでしょう。頻便は放射線の影響とは考えにくいですね」とのことだった。岡本先生は「PSAが3.705に下がっています。これは当然のことで、これから更に下がります。X腺検査・超音波検査でも異常なしです。また来月来院してください」と淡々と述べられた。治療の効果を実感できて、何とも爽快な気分になった。

(2)治療後1か月から2か月まで
①治療後1か月時の血液検査の結果を見ると、肝臓障害の指標であるALTが前回(半年前)の19から47へ上昇し、正常範囲(5~45)を超えていた。同様にAST(正常範囲10~40)も前回の26が35へ上昇していた。服用しているシロドシン(尿を出やすくする薬)の添付文書には、副作用の中に肝臓障害の指標(ALT・AST・γGPT・総ビリルビン・ALP・LDH)が上昇するとあり、「肝機能障害患者や高齢者では肝機能・腎機能が低下しているので、シロドシンの血中濃度が上昇するおそれがある。低用量(1回2mg)から開始するなどを考慮する」との記載もあった。肝機能・腎機能が低下すると、薬物を分解して「薬理作用をなくし・排泄する」のに時間がかかるので、肝機能・腎機能正常の患者と同量の薬を服用し続けると、薬が薬理作用のある状態で体内に溜まっていき、副作用発現の危険性が高まる。私は若いころB型肝炎に感染しており、その影響か、高齢のためか、これまでの検査でも肝臓・腎臓障害の指標が項目によっては(総ビリルビン・BUN・クレアチニンなど)正常範囲の上限付近になることがよくあった。

②排尿:肝機能・腎機能が低下していると、薬が分解されずに長く体内に留まるので、低用量でも薬理作用を発揮する可能性がある。そこで、肝臓・腎臓への負担を減らす目的もあり、シロドシンの錠剤を割線のところで割り、服用量を1回半錠(2mg)朝夕2回に減量してみた。1日の排尿回数に変わりはなかったが、出始めの出にくさが増したような気がした。家では治療以前から便座に座って排尿していたのだが、出にくいとき膝に手をついて前かがみになり、尻を浮かすと出やすいことを発見した。この方法で力まなくても排尿できるようになったので、シロドシンを減量のまま服用を続けた。尿漏れは散歩中の尿意切迫時に時々あるが、少量なので「超うすパッド10cc」で対処できている。

③排便:排便状況はさらに改善し、1日1~2回と治療前の回数になった。排便中とその後短時間の軽度の肛門痛はあるが、生活上の障害にはなっていない。

④治療後2か月の診察(2022.3.29):岡本先生から「PSAが1.000まで下がりました。もっと下がりますよ。超音波検査でも異常はありません」の言葉を頂いた。私は排尿・排便の状況とシロドシンの服薬量を半分にしたことを報告した。
(3)治療後2か月から4か月まで
①血液検査において、肝臓障害指標のALT(正常範囲5~45)が前回の47から今回は34と下降し、同様にAST(正常範囲10~40)も前回の35が33へ下降傾向を示した。シロドシン減量の効果かどうかはわからないが、とにかく悪化していなくて安心した。

②排尿:排尿はシロドシン半錠(2mg)朝夕2回服用でコントロールできている。過活動膀胱による尿意切迫への対策を再開した。対策は、トイレが近くにある在宅時に尿意を我慢する訓練である。過活動膀胱では、膀胱に尿が少ししか溜まっていないのに、「もう満タンでーす」のいい加減な信号が脳に入り、脳の「全力で即排尿せよ」の指令に従って、膀胱が「ギューッ」と収縮する。これが尿意切迫である。ここですぐ排尿せずに「グーッ」と我慢していると、膀胱が疲れるのか、短時間だが尿意が「スーッ」と消える。「また尿意切迫、また我慢」を2~3回繰り返していると、「満タン信号はいい加減」なことに気が付いた脳が「全力で即排尿せよ」の指令を出さなくなるのだという。また、膀胱から「満タン信号」がでるまでに溜まる尿量も増えていくらしい。治療後は我慢が効かず尿漏れになったので、訓練を止めていたが、少しずつ我慢時間を延ばしてみると、尿意が一時的に消えるところまで我慢できるようになった。

③排便:排便回数は1日1~2回、便の太さ・柔らかさもほどほどで申し分ないが、治療後続いていた排便痛に加えて、最近「便が太くて出にくい感じ」がする。私は「切れ痔」の傾向があり、治療前には、2日も出なかった後の排便は大変だった。肛門からの「太いよー、裂けるよー」の悲鳴情報を受け止めつつ、(「ここで止めるわけにはいかないんだよ」などと思いながら)更に目玉が飛び出るほど力んで排便し、見ると「こんな太いのがよく出たなー」と思えるくらいのモノが沈んでおり、その後半部で少し細くなったあたりから血がすじ状に附いていて、肛門が切れたことを示していた。つまり、肛門からの情報と実際の姿にほぼ乖離がなかった。治療後は排便が毎日あったので、便秘の苦しみから解放されていたが、最近、肛門からの「太いよー」の情報を感じるようになり、「ウーン」と力んで出し、見ると「太さも柔らかさもいい感じ」なのである。太くないのに太く感じるのは「肛門の伸展性・柔軟性が衰えたのかなー、それとも神経の問題かなー」などと考えた。

②治療後4か月の診察(2022.5.31):岡本先生から「PSAが0.543まで下がりました。超音波検査でも異常はありません」の言葉を頂いた。「薬はまだ必要?」の問いがあり、半量で飲んでいるので前の分が残っていたが、念のために処方をお願いした。「排便痛と便が出にくい感じ」を報告すると、「特に治療しなくても時間経過とともに治まるでしょう」とのことであった。

(4)治療後4か月から6か月まで
①治療後4か月の血液検査において、ALT(正常範囲5~45)が前回の34から更に下降して25を示し、AST(正常範囲10~40)も前回の33から28へと下降、シロドシン減量の効果と考えた。

②排尿:シロドシンを更に減量できるかどうかを試すために、服薬を止めてみたところ、2日目になると、尿の出始めに時間がかかるようになり、出だしてからの勢いも弱まった。半錠(2mm)を朝1回だけ服用すると、翌朝まで満足な排尿が得られたので、以後この用法で服薬を続けた。

③排便:排便時痛と「便が太くないのに太く感じる肛門感覚」の程度は悪化してはいない。慣れたせいか、「目玉が飛び出るほど力む」ことはなくなった。

④治療後6か月の診察(2022.7.26):岡本先生から「PSAが0.464まで下がりました。まだ下がりますよ。超音波検査でも異常なし」の言葉を頂いた。排尿・排便・服薬状況を報告すると、服薬量は排尿状況に合わせて調節するよう指示があった。帰宅後、血液検査報告書を見ると、ALTは前回の25から更に下降して20を示し、ASTも前回の28から24へと下降、それぞれの治療前(半年前)の値(19及び26)となっていた。薬物には効果(役に立つ作用)と副作用(害になる作用)があることを再認識した。

(5) 男性機能について
男性機能は子孫を残すための機能であり、「①性欲、②勃起、③射精」が、男性ホルモンの作用のもとに発揮される。会社の業務にたとえて言えば、「顧客(男性ホルモン)の依頼で、会社(脳)は①プロジェクト(性欲)を設け、②現場に指令を出して体制を整え(勃起)、③指令を出して目標を遂行させる(射精)」といったところであろうか。通常、①→②→③の順に進行するが、①が夢物語で②→③と実行されること(夢精)や、①なしで②が実施されるものの業務が立ち消えとなること(朝立ち)もある。「ホルモン療法」では、男性ホルモンの作用が遮断されるので、顧客からの依頼がないことになり、①②③は存在し得ない。一方、「前立腺全摘術と放射線療法」は、男性ホルモン作用が健在なので、顧客からの依頼があることになり、①には影響がない。しかし「前立腺全摘術」では、男性機能関連神経や射精に必要な精嚢が前立腺と共に摘除されてしまうし、「放射線療法」では、男性機能関連神経にも放射線が照射されて障害をうけるので、会社の指令系統が障害されることと同義であり、②③に対する影響が問題となる。

性生活の現役から退いて久しい77歳の高齢者にとって、癌治療の男性機能に対する影響を感じ取ることは難しい。まず、私が受けた治療は小線源単独療法であり、ホルモン療法を併用していないので、身体の男性ホルモン状態は治療前後で変わらない。従って、これぞ女性という体型にお目にかかったとき、「イイナー」と思う①の気持ちには治療前後で変化がない。①が②③に進むことはもう何十年もないが、脳の勘違いで②が発現する「朝立ち」は治療前にはときどき(数回/月)あった。膀胱に尿が溜まった感覚を脳が「性欲が高まった」と誤解するのであろうか。現在、治療から半年になるが、これまで「朝立ち」は一度もなかった。膀胱から脳への報告信号あるいは脳から「セガレ」への指令信号の伝達システムが機能しなくなっているのだろう。これをもって「治療が男性機能に対する影響はあった」とするのは言い過ぎかなー?

患者さんへの質問:
もし、時を遡れたとしたら、同じ治療を選びますか?

「はい、この治療を選びます」


堺 坂本


 

堺 坂本さん、インタビューへの回答ありがとうこざいました。もしこの回答内容を変更したい場合は、再度ご記入いただければ、差し替えさせていただきます。
また、あとで私のコメントをここに記入させていただきます。

以下非公開
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